Q.福祉教育の教材って?

 福祉教育に取り組むにあたって、教材選定はとても重要な要素です。たとえば、子どもたちはその発達段階に応じて、理解や関心の度合いに違いが見られます。テーマや対象,到達目標に応じた教材選定が、福祉教育の成果を左右する大きな要因であるともいえます。

 これまでに、福祉教育の場でよく教材として用いられてきたものには、車いすや白杖、アイマスク、シニア体験セット、点字練習器、手話体験などがありました。多くは高齢者や障害者などの擬似体験をすることによって、対象理解を図ろうというものです。

 実際、これらの教材が各地域で用いられることによって、急速に福祉教育の実践が全国に拡大し、福祉教育が一般化したことは事実です。現状では、これらの教材は、どの地域でも比較的入手しやすく、取り入れやすい基本教材であり、これなしには、現在の福祉教育の導入部分が成り立たないといっても過言ではありません。

 しかし、これらは、非常に利用しやすく、効果的な教材である一方で、教材に頼りすぎて、たんなる擬似体験だけのプログラムを生んでしまう危険もあるといえます。

 たとえば、「障害者の気持ちを理解する」といったテーマ設定で、車いすを教材に使ったプログラムを企画したとします。ここで、もし車いすに乗ってみるという体験だけでプログラムが終了してしまう場合(こうしたことはよくあるのですが)、ほんとうに「障害者の気持ちを理解する」という体験ができるでしょうか?

 教材は、そのものが意味をもち、なにかを教えてくれるのではなく、注意深く、しかも創造性豊かなプログラムの教材として用いる場合にはじめて意味をもち、理解を導き出す媒体になるのです。

 では、たとえば「障害者の気持ちを理解する」には、どのような体験が必要でしょうか?そのためには、どのような教材を、どのように用いるべきか、という検討をする、準備段階がもっとも重要になります。

 車いす乗車体験ではなく、たとえば、子どもたちの好きな「テレビゲーム」や「伝承あそび」「インターネット」「スポーツ」「音楽」「ダンス」「アート」などを教材にしては、このテーマに取り組めないでしょうか。私たちにも多くの独創性とアイデアがあるはずです。そして、教材は、あらゆる生活の場面に存在しているはずです。