Q.人権教育や道徳との違いは?

 人権教育、道徳教育あるいは平和教育、環境教育、消費者教育などは、いずれも「ほんとうの人間らしさとはなにか」を追及する営みですから、本質的に福祉教育と深いかかわりをもっています。結論から言えば、相互に自立的または排他的にとらえる必要はなく、互いに協調しあえる実践群です。

 基本として、「社会福祉問題」を学習素材とする福祉教育は、社会的矛盾としての「生(なま)の現実」を起点とする実践であるという理解が重要です。社会福祉問題に直面している人たちは、実は社会的に排除され、高齢者差別・性差別・人種差別あるいは家庭問題や失業問題などを、同時にかかえている場合が多々あります。福祉における生の現実とは、いりくんだ矛盾の現実なのです。

 ですから、福祉教育によって学習者が気づくのは、ステレオタイプな福祉理解や障害理解だけではありません。「福祉施設の職員には、なぜ女性が多いのだろう?」「施設利用者の家族はどうしているのだろう?」「この人はどんな人生を歩んできたのかな?」など、人権教育や道徳のテーマそのものへの気づきも多く生まれます。福祉教育は、テーマの内発的な意識化をうながすのです。

 したがって、福祉教育は、他の人間教育のアプローチに位置づく実践です。他の教育実践は福祉教育を通じて、より現実感のある実践へと昇華し、福祉教育は、他の教育実践と共存することによって、より広義の福祉教育(=人間教育)へと発展します。相互に並列的な教科のごとく扱う発想は、実は、各々の人間教育としての共通基盤を分断する発想であり、こうした可能性をそぐものです。互いが補いあって組み合わされるように、カリキュラムを総合化することが必要です。

 実際には、学習者の内発的な気づきを、どのように人権教育などにつなげるかが課題ということになります。人権教育の専門家などに、福祉教育実践のサポーターとしてかかわってもらうのもひとつの方法です。学習者の自由な気づきを、各専門家のアンテナでキャッチしてもらい、そこから発展的に、次のカリキュラムを着想してもらうのです。

 現実には、いまだ福祉教育と他の教育実践との関係はとぼしい状況にありますが、実践にかかわっている人たちの今後の創意工夫で、広義の福祉教育(人間教育)が創出されることが、まさに期待されているところです。